つながっていく風

 第10回 国立民族学博物館と万博記念公園

 

大阪万博の跡地に造られた万博記念公園

その中にある民族学博物館で
ある画期的な試みが行われました。
それは「企画展『さわる文字、さわる世界』」
「ユニバーサル・ミュージアムを考える」
という国際シンポジウム

今回はその企画展とシンポジウムのお話を
中心に取材してきました。

 

国立民族学博物館について

万博記念公園のほぼ中央に位置する国立民族学博物館(みんぱく)。

大阪万博でのテーマ館展示物の一部に、その後各研究者が収集した資料などを加えて展示を行っているのだそう。

1階にはレストランやミュージアムショップなどがあり、2階が展示スペースとなっています。

博物館の他に、総合研究大学院大学の博士課程という教育機関としての機能も。

企画展「さわる文字、さわる世界」とは?

 さて、そんな「みんぱく」で行われた企画展「さわる文字、さわる世界」とはどんなものだったのでしょうか?

「触文化が創りだすユニバーサル・ミュージアム」を副題にその企画展は行われていました。
現代日本の博物館のほとんどでは、「見る」ことを中心に展示が行われています。中には何かを触って動かすなどの展示もありますが、その場合も「動くさま」 を「見る」ためにレバーを操作したりボタンを押したりといった「見る」ことを前提とした「さわる」でした。

ところがこの「さわる文字、さわる世界」は、「さわる」ことそのものに着目した画期的なもの。企画展のパンフレットにも点字が使用され、一般・障害のある方の区別なく来館者全員に配布していました。

パンフレット表紙・裏表紙

 

 

 

タイトル文字(文字が浮き上がっているのがわかりますか?)と点字部分のアップ

点字以前の盲人用文字のほか、盲学校で使用されていた富士山の模型や目の不自由な人が触って心で拝むために作られた観音像などの「さわっておもしろい物・さわって感じる物」。

この企画展ならではの、通常の博物館ではなかなかお目にかかれない貴重な展示物がたくさん展示されていました。

むすび文字

字の横にある紐の結び目が
字を表しています。

最初の盲人用旧約聖書

ふれあい観音像

目の不自由な人がさわって心で拝める仏像がないことに対する疑問と怒りから作られた


バードカービング

すべて手で触れて楽しむことができました。

この企画展を観て感じたのは、「これは目の不自由な人だけに向けたものではない」ということでした。目の不自由でない多くの人が「触れる」感覚をいかに普段忘れているのか、なおざりにしているのか、といったことを思い出させてくれます。そうした点でも、非常に意義のある企画展でした。

企画展「さわる文字、さわる世界」へのリンク


(この企画展はすでに終了しています)

国際シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムを考える」

上で紹介した「さわる文字、さわる世界」展の関連イベントとして、開催されたシンポジウムです。「〜“つくる”努力と“ひらく”情熱を求めて〜」という副題をかかげ、さまざまな意味での共生を実践するフィールドである博物館の、ユニバーサル・ミュージアムとしてのあり方を多角的にとらえ、今後の新たなる博物館のあり方を発信したいということで行われました。

開催前から大きな反響があり、申し込み開始まもなく満員御礼。開催後の反響も大きかったようです。

国際シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムを考える」へのリンク

(このシンポジウムはすでに終了しています)

今後に向けて

法改正などの動きにより、施設のバリアフリーが進みつつあるとはいわれていますが、実際には車いす利用者に関してのものが多いように感じます。博物館や美術館の施設改修もそうしたものがほとんどです。都市の一部の駅や施設などでは点字や音声を使った案内板が設置されるようになりましたが、まだまだほんの一部にすぎません。日常生活の最低限を補助するレベルです。目の不自由な方に対するバリアフリーは、学びや娯楽に関してはまだまだ足りないと言えるでしょう。

そんな中で開催された「さわる文字、さわる世界」展と国際シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムを考える〜 “つくる”努力と“ひらく”情熱を求めて〜」は非常に画期的なものでした。取材や反響も多かったそうです。障害のある方の観覧も目立ち(普段はあまり多くはいらっしゃらないそうです)、盲学校の集団観覧申d込みなども多くあったとか。

今回の企画展・シンポジウムが、真のバリアフリーに向けて、未来への架け橋、指標のひとつとなることは間違いないようです。

国立民族学博物館の常設展

「みんぱく」で展示されているものの多くは、他の美術館や博物館と違って実際に生活の中で使われていた物です。そのため、観覧者にはできるだけ人々の生活を感じ取ってもらいたいというコンセプトのもと、多くの展示物が実際に手で触れる事が出来るようになっています。上でご紹介した企画展やシンポジウムは終了しましたが、それでも訪れる価値のある博物館ですので、どうぞ興味のある方は是非、行って体感してみて下さい。ただ、非常に展示物が多いので、ゆっくり観るとなると1日では終わらないかも。

「みんぱく」には右のような点字パンフレットも用意されています。

 

国立民族学博物館の成り立ち

日本庭園前駐車場から見た「みんぱく」

国立民族学博物館(みんぱく)は普通の博物館とはそのあり方が少し違っています。
それは、大学共同利用機関のひとつであり、博物館をもった研究所であるということ。

民族学・文化人類学に関する調査・研究を行い、その成果に基づいた民族資料の収集・公開などの活動をし、諸民族についての認識と理解を深めることを目的として開館されたのだそうです。

そうした成り立ちの「みんぱく」だからこそ、今回の企画展とシンポジウムが生まれたのかもしれませんね。

立役者 廣瀬浩二郎(ひろせ こうじろう)氏

「みんぱく」の他に、今回の企画展・シンポジウムには立役者がもうひとりいました。民族文化研究部・助手の廣瀬浩二郎氏です。

障害者文化に関する人類学的研究をはじめとした、日本宗教史・民俗学を研究されている方で、今回の企画展やシンポジウムの他にも、みんぱくゼミナールでの講師や 『触る門には福来たる』の執筆など、各方面でご活躍されています。

この方のエッセイや著書には「目からウロコ」の記述が満載なので、興味のある方は是非そちらもチェックしてみては?

国立民族学博物館内の施設とアクセス

館内のトイレやスロープ、エレベーターなどのバリアフリーはほぼ完備されています。ただ、展示物の量が多いため、若干通路が狭く感じるかもしれません。
万博記念公園の正面に中国自動車道の吹田インターチェンジがあるので、自動車でのアクセスはかなりいいです。駐車場は、万博公園の中央に新設された日本庭園前駐車場が一番近くて便利。障害者用スペースも10台用意されています。
万博公園の入口で「みんぱく」の観覧券を購入すると、自然文化園を通行できます。

公園の北口は、車いすやベビーカーの通行ができなくなっているので、注意が必要です。

万博記念公園について

基本的に万博時から使用している施設が多いため、現時点ではバリアフリーの対応が不十分な箇所もあるようですが、バリアフリー化推進計画として、いろんな点からのバリアフリー化を進めているのだそうです。
今の所は「みんなのトイレ(身体障害者のみならずお年寄り、幼児づれ、妊産婦などにも利用しやすいトイレ)」の設置と、「グレーチング」のバリアフリー対応を進めているそうです。 グレーチングとは側溝などのフタで金属の格子状になっているもので、これの目が粗いと車いすの車輪がはまりやすいのですが、目の細かいものに交換することで、そうした事故を防ぐことができるのだそうです。

 

「バリアフリー」や「ユニバーサル」といった言葉をキーワードとして、全国でいろんな試みや改修などが行われるようになってきました。
今回ご紹介した「みんぱく」もそのひとつです。これをきっかけとして、もっともっと「バリアフリー」な社会になっていくといいですね。

 

「みんぱく」のホームページへ

万博記念公園のホームページへ


 

 

 



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