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特養は比較的利用料が安いので人気があるという話を前回しました。でも、もしかしたら理由はそれだけではないのかもしれません。特養は基準も厳しく公的機関も多く関わってきますから、多少の差こそあれ、介護サービスの質がひどく悪いということがあまりないからではないでしょうか。そもそも特養は身体や精神に著しい障がいがあり常時介護を必要とするお年寄りを対象としていますが、有料老人ホームはお年寄りを10人以上入居させ、食事の提供などの日常的なサービスをする、という定義になっていますので、必ずしも介護の必要なお年寄りを対象としているわけではありません。そんな風に特養と有料老人ホームは、実は位置づけからして全く違っているのです。
でも、実際には有料老人ホームに介護の必要なお年寄りが多く入居しています。本来は対象でないお年寄りを扱っているということが、トラブルの原因なのではないでしょうか。それだけの介護サービスを提供する体制が整っていないわけですから。基準では整える必要はないことになっていますし。でも、実際は特養ほどではないにしろある程度は整っていたり、特養並みに整っている施設も多く、逆にとてもしっかりした良い有料老人ホームだってたくさんあります。今回問題にしているのは、それ以外の劣悪な施設がまだまだ多いということ。施設の基準が厳しくなったり、無届けで営業している施設に自治体が届け出をするよう再三指導にまわるなどしても、無届けの有料老人ホームは増えこそすれ、減ってはいません。でもそれも特養の待機者が42万人もいる現状を考えると、仕方がないことだという意見もあります。確かに今後高齢化社会はどんどん進んでいく一方ですし、これ以上介護難民を増やさないためにも、受け皿が減るのは非常にまずいことです。でも、かといって、安心して入居できない施設ばかり増えても無意味なのではないでしょうか?
そもそも特養(今更ですが、特別養護老人ホームの略)であろうと、有料老人ホームだろうと、老人ホームというものは「終の住みか」とイメージしている、考えている人が多いと思うのです。一度入ったら死ぬまでそこで暮らすものだと考えている人が大多数ではないでしょうか。病院や老人保健施設ならともかく、有料老人ホームを最初から一時しのぎの場所だと考えている人はほぼいないでしょう。入居時にたくさんお金もかかりますし。ならば、有料老人ホームも、あらかじめ特養に近い基準や制度を考えていく必要があるのではないでしょうか。そんな簡単な話ではないとは思うのですが、長い目で見た時に、劣悪な施設が増え続けてひどい目にあう利用者がたくさん出て社会問題になるよりはマシなのではないでしょうか。
経営者側からは、施設の基準が厳しくなったことによって経営が圧迫される点について、そうしたところを行政が面倒見てくれるのかというような声も聞かれます。また、そのせいでつぶれるホームが出たり、新規オープンを見合わせたりといったことが増えてきた場合には、たくさんある利用者のニーズをどうするのかとも。
ニーズがあるのだから、無届けやサービスの悪いホームがあるのもいたしかたない、という意見も経営者側からは聞こえてきます。ですが、老人ホームはお年寄りの生活の場、人生の最期を過ごす場所です。いったん入居したらよほどのことがない限りそこでずっと暮らすのです。気にいらなかったり合わなかったら、じゃあ別のところへ、なんて簡単に引っ越しできる訳ではないのです。普通のサービス業と同じに考えてもらっては困るのです。非常に大事な場所なのですから、顧客満足度だってある程度高くなくてはいけません。人間の欲望というものは果てがありませんから、どんなに素晴らしい有料老人ホームでも、入居者全てが100%満足している、なんていうホームはありえないとは思います。でも、だからといって、ただ生きながらえればいい、というような人間の尊厳を無視した無届けホームが今後も増殖していくのは、とても許せることではありません。
まだまだ不備の多い介護保険制度や人手不足、長い不況など問題が多くある中で、介護施設を運営していくのはとても大変だとは思います。でも、少なくとも、家族や行政が施設を訪れた際には綺麗な居室に案内し、彼らが帰ってから、入居者を粗末な部屋に戻したりするような、人間の尊厳を全く無視しているような、そんな施設くらいはなくなっていって欲しい。そう願う今日このごろです。
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